準備・計画・スケジュール
展示会の予算、全部に少しずつかけていませんか|「平均配分」が小さなブースを埋もれさせる理由
イシモトキンヤ
見積書の項目を、上から順に少しずつ削っていく
装飾会社から届いた見積書を開いて、「バックパネル」「展示台」「カウンター」「ライト」「モニター」「カタログスタンド」と並んだ項目を、上から順に少しずつ削って予算内に収める。多くの小さなブースは、この作業で仕様が決まっていきます。
削り方としては合理的に見えます。どの項目も必要そうで、どれか一つを捨てる理由が見つからないからです。ただ、この決め方をした瞬間に、ブースの成果はほぼ決まってしまいます。
「均等に削る」は、判断ではなく判断の放棄です
全体に平均的に予算をかけたブースは、失敗しているようには見えません。パネルもあり、展示台もあり、照明もある。会場で見れば「ちゃんとしたブース」です。
問題は、そのブースに一つも突き抜けた要素がないことです。
小さなブースの隣には、多くの場合もっと大きなブースがあります。均等配分でつくった1小間は、隣と比べて「小さくてきれいなブース」になります。来場者にとっては、通路の景色の一部です。景色は認識されません。
なぜ平均配分をしてしまうのか。理由ははっきりしています。どこに集中させるべきかを決める基準を、誰も持っていないからです。基準がなければ、均等に配るしかありません。均等配分は公平な判断のように見えて、実際には「決めないこと」を選んだ状態です。
そしてこのとき、担当者が感じている問題と、実際に起きている問題はズレています。多くの場合、社内では「予算が足りなかった」と総括されます。しかしSHOWCASEが見ているのは、予算不足ではなく、限られた予算が「来場者が足を止める前」にほとんど使われていないという配分の問題です。
予算は「止まる前」に集中させる
展示会の成果は、次の順番でしか生まれません。
目的 → ターゲット → 課題 → 訴求 → 来場者行動 → ブース → 接客 → 商談
このうち、来場者側から見ると、体験は「おや?(認知)→ へぇ。(興味)→ そうなんだ。(理解)→ 次の行動(接触)」という順に進みます。SHOWCASEではこれを「おへその法則」と呼んでいます。
重要なのは、これが足し算ではなく掛け算だという点です。
「おや?」が起きなければ、その先の興味も理解も接触も発生しません。どれだけ丁寧な展示台をつくっても、上質なカウンターを置いても、足を止めていない人には一切届きません。
つまり予算配分の判断基準は、項目の必要性ではなく、こう問うことです。
この費用は、来場者が「立ち止まる前」に効くのか、「立ち止まった後」に効くのか。
「後」に効く費用は、認知がゼロなら成果もゼロになります。「前」に効く費用は、後工程すべての母数をつくります。だからSHOWCASEでは、小さなブースほど予算を「前」に寄せるべきだと考えます。これが一点豪華主義の中身です。
「前」に効く費用は、実質的に二つしかない
1小間の場合、通路を歩く来場者から見えているのは、ブースの一部だけです。展示物の細部は視界に入りません。「前」に効くのは、ほぼ次の二つです。
① 遠くから読ませる、巨大なキャッチコピー看板 自社名でも商品名でもなく、来場者の困りごとを指す一行を、遠くからでも読める大きさで掲げます。小さくきれいなパネルを複数枚並べるより、大きな一行が一枚あるほうが強い。文言のつくり方そのものは、キャッチコピーの記事で詳しく扱っています。
② その一行を浮かび上がらせる照明 多くの会場は壁も床も白く、標準の照明はブース全体を平坦に照らします。平坦な光の中では、何が主役かが伝わりません。看板と主力展示にスポットを当てるだけで、同じブースがまったく違って見えます。照明は装飾ではなく、視線を一点に集めるための投資です。
削っていいもの、削ってはいけないもの
一点豪華主義は「全体を安くする」話ではありません。削る対象は、装飾費のうち「止まった後」に効く要素です。展示台は既存什器で代用できます。カウンターは小型で足ります。装飾の造作は最小限で構いません。
一方で、接客体制と会期後のフォローは、装飾費とは別の予算です。ここを削ると、集めた「おや?」を商談に変換する出口がなくなります。集中投資は入口を広げるためのものであって、出口を閉じるためのものではありません。
見積書に「前」「後」と書き込む
今日やることは、一つだけです。
装飾の見積書を開き、各項目の横に「前」か「後」を書き込んでください。
「前」=来場者が足を止める前に効くもの(大型看板、照明、遠目に効くビジュアル)
「後」=足を止めた後に効くもの(展示台、カウンター、カタログスタンド、内側の造作)
書き終えたら、「前」の合計金額を出します。それが装飾費の半分に満たないなら、配分を組み替える余地があります。
所要時間は5〜10分。判断材料はこれで揃います。
まとめ
予算は「必要な項目」に配るものではなく、「立ち止まる前」に集中させるものです。
平均配分は公平ではなく、単に決めていないだけ。決めた企業だけが、会いたかった相手に気づいてもらえます。
自社の場合はどうなのか、気になった方へ
SHOWCASEでは、現在のブース案を 認知 → 興味 → 理解 → 接触 → 商談 の流れで確認し、どこで来場者を取りこぼしているのかを無料で診断しています。見積書が手元にある段階でも構いません。