全体像・基本理解
展示会は「ショッピングモール」ではありません|主催者が連れてくるのは、会場までの人です
イシモトキンヤ
出展を決めたあと、こんな手順で準備を進めていないでしょうか。小間位置を確認して、社名とロゴを大きく入れた壁面を発注し、パンフレットを刷って、当日を待つ。主催者の来場者数を見て「これだけ人が来るなら、うちのブースにも何人かは寄ってくれるはずだ」と考える。そして終わってみると、名刺は数十枚。会いたかった相手は、その中にほとんどいなかった。
問題は、ブースが小さかったことでも、商品が弱かったことでもないかもしれません。
「出展すれば、客は来る」と思ってしまう理由
出展料を払って場所を借りる。主催者が広告を打ち、招待券を配り、大勢の来場者を集めてくれる。この構図は、大型ショッピングモールへの出店とよく似ています。
モールへの出店は実際に有効です。セーターを買いに来た人が、たまたま眼鏡店の前を通り「そろそろ替えたかった」と思い出して入店する。目的買いだけでなく「ついで買い」が発生します。
ただし、これが成り立つには条件があります。SHOWCASEでは、次の2つだと考えています。
ひとつは、その店がすでに知られていること。モールに入っている眼鏡店は、たいてい誰もが名前を知っています。もうひとつは、その場所自体が信頼されていること。知らない店でも「このモールに入れるなら、まともな店だろう」と思ってもらえます。
BtoB展示会に、この2つはそろっていません。1〜2小間で出展する中小企業のことは、ほぼ誰も知りません。そして展示会は、出展料を払えば基本的にどの企業でも出展できます。来場者もそれを知っているので、「価値のあるブースも、そうでないブースもある」という前提で会場を歩いています。
つまり主催者が連れてきてくれるのは、会場までの人です。ブースの前で足を止めるところまでは、誰も担ってくれません。
ここを他力本願のまま進めると、当日は「人が来なかった」という感想になります。しかし実際に起きているのは、目の前を通っているのに、気づかれていないという状態です。改善すべき場所を、最後まで取り違えたままになります。
来場者は「探しに来ている」のではなく「見つけに来ている」
では、来場者は何をしに会場へ来ているのか。
多くは、業界の新しい情報を集めること、セミナーに出ること、目当ての数社を見ることです。すぐに買う相手が決まっているなら、わざわざ会場を歩かず検索して問い合わせます。
来場者にとっての展示会は、目的買いよりもウィンドウショッピングに近い場です。流行を眺めて歩いていたら、たまたま目に入った一枚で「そういえば、うちもあれが古くなっていた」と気づく。あの感覚です。
しかも、展示会場を歩くのはかなり疲れます。硬い床、革靴、限られた時間。だから来場者は、自分に関係ない情報を高速で遮断しながら歩いています。遮断しないと、肝心の「偶然の発見」にたどり着けないからです。
この前提に立つと、ブース前面の役割が変わります。
前面は、自己紹介の場所ではありません。「これは自分に関係がある」と気づかせるための場所です。SHOWCASEではこれを「おや?|認知」と呼び、そこから「へぇ。|興味」「そうなんだ。|理解」「次の行動|接触」へつなげる順番で設計します。
社名とロゴは、すでに知られている相手にしか働きません。知らない社名は、来場者にとって「判断材料がない情報」なので、遮断の対象になります。
だから判断の順番は、ブースの見た目からではありません。
誰に会いたいのか → その人は何に困っているのか → 何を伝えれば「自分のことだ」と思うのか → その言葉をどこに、どの大きさで置くのか。
この順で決めたときにだけ、前面の一枚が商談機会につながります。逆に言えば、置くものに迷ったときは、こう問えば決まります。
「この一枚は、会いたかった相手に『自分のことだ』と思わせるか」
これは、業種が変わっても、展示会が変わっても使える基準です。
今日やること|前回のブース写真を開く
前回の展示会のブース写真を1枚開いてください。
そして、通路から一番大きく見えている言葉を、紙に書き出します。
それが社名やロゴだった場合は、その隣にもう一行だけ書いてください。
「会いたかった相手が、いま困っていること」
この一行が書けなければ、次のブースでも同じことが起こります。書けたなら、それが次の前面の出発点です。
5分で終わります。
まとめ
主催者が連れてくるのは会場までの人であり、ブース前で足を止めてもらう責任は、出展者側にあります。
自社の場合はどうなのか、気になった方へ
SHOWCASEでは、これまでのブースを「認知 → 興味 → 理解 → 接触 → 商談」の流れから確認し、どこで来場者を取りこぼしているのかを無料で診断しています。
デザインの良し悪しではなく、止まる場所と落ちる場所を見ます。