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全体像・基本理解

「多くの人に知ってもらう」は目標ではない|展示会KPIは現場の稼働限界から決める

イシモトキンヤ

2026/8/24 07:31

社内で「今回の展示会、目標は?」と聞かれて、「まずは多くの人に知ってもらうことですね」と答えたことはないでしょうか。出展申込書の目的欄に「認知拡大」と書いた記憶があるかもしれません。

誰も反対しません。会議もそこで終わります。

ただ、展示会が終わって「で、どうだった?」と聞かれたとき、答えに詰まる。多かった気もするし、少なかった気もする。この記事は、その居心地の悪さの正体についてです。

「認知拡大」は、目標を決めないという決定

「多くの人に知ってもらう」は目標の形をしていますが、達成も未達成も判定できません。判定できない以上、それは目標ではなく、目標を決めないことを決めた状態です。

なぜそう書いてしまうのか。理由は、担当者の怠慢ではないと考えています。

ひとつは、根拠がないこと。初出展であれば過去データがなく、前回出展していても名刺の枚数以外は記録していないことが多い。根拠のない数字は書きにくい。

もうひとつは、数字を出した瞬間に責任が発生することです。展示会専任ではなく、社長や営業や広報が通常業務と兼任している立場では、未達だったときの説明コストが重くのしかかります。

その点「認知拡大」なら、どんな結果でも「多少は知ってもらえた」と言えてしまう。抽象的な目標は、結果的に責任を引き受けないための安全装置として機能してしまいます。

問題は、その安全装置が当日の現場を壊すことです。

目標が決まっていないと、次の3つが決められません。

  • 誰に声をかけるか

  • どこまで説明するか

  • どこで会話を切り上げるか

基準がないので、通りかかった人に均等に対応することになります。その結果、一番丁寧に時間を使った相手が、一番商談から遠い人だった、ということが起こります。

そして終わったあと、比較する基準がないので、振り返りが「なんとなく手応えがなかった」で終わる。改善点が出てこないまま、「うちには展示会は向いていない」という結論に着地します。

悪いのはブースのデザインでも、来場者数でもありません。判断の基準を持たずに当日を迎えたことです。

KPIは、期待から降ろすのではなく、限界から上げる

では、何を基準に数字を決めるのか。

SHOWCASEでは、展示会のKPIは「こうなってほしい」という期待から降ろすのではなく、現場が物理的に対応できる限界から積み上げるものだと考えています。

計算式はひとつです。

説明員数 × 開催時間 ÷ 1人あたりの接客時間 = 対応できる来場者数の上限

仮に、説明員2名、開催6時間×2日(720分)、接客1人15分と置くと、2×720÷15=96名。この2日間で対応できるのは、最大でも96人ということになります。

この数字は2つのことを教えてくれます。

1つめは、上限だということ。 どれだけ集客がうまくいっても、これ以上は対応できません。もし社内で「名刺200枚」と話していたなら、それは人員や接客時間の設計と矛盾しています。1人7分ペースで休憩なしに動き続ける計算になり、達成できないまま士気だけが下がります。

2つめは、上限が決まると、配分の問題に変わること。 96人分の時間しかないなら、その時間を誰に使うかを決めなければなりません。ここで初めて、SHOWCASEが判断に迷ったときに立ち返る一問が効いてきます。

「それは、会いたかった相手との商談機会につながるか?」

KPIは、数を追うために出すのではありません。誰と話さないかを決めるために出します。

もうひとつ重要なのは、この式のなかで自社がコントロールできる変数は、実質「接客時間」だけだということです。1小間に説明員を詰め込むと圧迫感が出て入りにくくなり、開催時間は主催者が決めます。だからこそ、30秒で伝える説明と3分で伝える説明の2つを用意しておくことが、KPIを実現するための具体的な手段になります。

さらに、名刺獲得数はこう分解できます。

ブース前を通る人数 × 気づいてもらえる割合 × 立ち寄り率 × 名刺交換率

通行人数は立地で決まるので動かせません。動かせるのは残りの3つです。そしてこの3つは、SHOWCASEの「おへその法則」の、おや?(認知)/へぇ。(興味)/次の行動(接触)にそのまま対応します。

ここまで分解しておくと、振り返りの言葉が変わります。「名刺が少なかった」ではなく、「気づかれてはいたが、立ち止まってもらえなかった」まで言える。原因の位置が特定できれば、次回直す場所も決まります。

今日やること:電卓を一度だけ叩く

今日やることは、ひとつだけです。

説明員数 × 開催時間(分)÷ 想定接客時間(分) を計算して、出てきた数字をメモに1行で書いてください。

それで完了です。5分で終わります。

その数字が、社内で話していた目標より明らかに小さかった場合、疑うべきは現場ではなく、目標の方です。

まとめ

KPIは、期待から降ろす数字ではなく、現場が対応できる限界から積み上げる数字です。


「うちの上限は何人なんだろう」と計算してみて、今のブースでその人数を集められるのか気になった方へ。

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