ブース設計・デザイン・レイアウト
会議テーブルを展示台に使うと、来場者が手を伸ばす前に離れていく理由
イシモトキンヤ
ブースの準備を始めるとき、多くの担当者がまず考えるのは、会場でレンタルできる会議テーブルを展示台として使うことです。白い布をかけ、商品とパンフレットを並べれば、それらしい展示スペースはすぐに完成します。追加費用もかからず、誰からも文句を言われない、ごく標準的なやり方です。
ただ、当日ブースに立ってみると、来場者は商品の前で足を止めても、なぜかそこから先、手を伸ばしてはくれない。そんな経験はありませんか。
結論から言うと、これは商品に魅力がないからではありません。来場者が離れていくのは、「屈むのが面倒」という、ごく物理的な壁があるからです。
会議テーブルが「間違っている」わけではない
会議テーブルの高さは、一般的に約70cmです。これは、椅子に座って書類を書いたり、打ち合わせをしたりするのにちょうど良い高さとして設計されています。
問題は、この高さそのものではありません。問題は、「展示会の来場者は、座らずに、立ったまま近づいてくる」という前提を考えずに、目の前にあるテーブルをそのまま流用してしまうことです。
会議テーブルは会場に用意されていて、無料で使え、平らな天板がある。だから「置き場所」としては十分に機能しているように見えます。担当者が悪いわけではなく、単に「この高さで、来場者は本当に手を伸ばしやすいか」という判断基準を、誰も渡されてこなかっただけなのです。
その結果、何が起こるか。来場者は近づき、商品に目を落とします。しかし手に取るには、軽く腰を屈める動作が必要になる。このほんの少しの動作が、来場者の中で「気になる」を「まあいいか」に変えてしまいます。しかも来場者はクレームを言うわけでも、不満を口にするわけでもありません。ただ静かに、次のブースへ歩いていくだけです。ブース側からは、来場者が足を止めてくれたことしか見えないため、この機会損失にはなかなか気づけません。
判断基準は「立ったまま、屈まずに手が届くか」
展示台の高さは、見た目や装飾の問題ではありません。それは、来場者が実際に行動するかどうかを左右する、構造上の分かれ目です。
SHOWCASEでは、目的からターゲット、課題、訴求と考えたうえで、最後に「来場者は、ブースの前でどう動くか」という来場者行動を設計します。展示台の高さは、この来場者行動を決める要素のひとつです。どれほど魅力的な訴求ができていても、来場者の体が反応できなければ、そこから先の接触にはつながりません。
具体的な基準として、私たちは「立ったままの来場者が、屈まずに自然に腕を伸ばせる高さ」=90cm〜100cmを目安にしています。展示会業界では、この範囲は「ゴールデンゾーン」と呼ばれることがあります。会議テーブルの70cmとの差は、わずか20cm程度です。しかしこの20cmが、「屈む」という動作を発生させるかどうかの境界線になります。
もちろん、すべての商品をこの高さに合わせる必要はありません。大きく重量のある商品は、逆に低い位置に置いたほうが安心感が生まれます。基準にすべきなのは、「来場者に実際に手に取ってほしい主力商品を、どの高さに置くか」という一点です。
来場者が商品に気づく(おや?)ところまではできていても、実際に手を伸ばすという行動が起きなければ、興味は接触にはつながりません。展示台の高さは、この「気づく」と「関わる」の間にある、小さくても確実な壁なのです。
今日やること
今すぐメジャー(なければスマートフォンの計測アプリでも構いません)を用意し、今回使う予定の展示台、あるいはその候補になっているテーブルの高さを測ってください。
90cmに届いていなければ、その差だけをメモに一行書いてください。
「あと◯cm足りない」
これだけで十分です。この一行が、当日までに用意すべき角材や嵩上げグッズの目安になります。
展示台の高さは、装飾の一部ではありません。来場者が「手を伸ばせるかどうか」を決める、商談機会の入り口です。
この記事を読んで、自社の展示台は本当に来場者の手が届く高さになっているだろうかと気になった方へ。SHOWCASEでは、現在のブースを認知・興味・理解・接触・商談の流れに沿って診断し、どこで来場者を取りこぼしているのかを無料でお伝えしています。まずは、あなたのブースの現在地から確認してみませんか。