ブース設計・デザイン・レイアウト
「デザインはセンス」と諦める前に。ブースの見え方は、3つの距離で設計できる
イシモトキンヤ
ブースのラフ案を見ながら、「なんとなく良い」「なんとなく物足りない」で判断していませんか。
そして最後は、「うちにはデザインのセンスがないから」で話が終わる。制作会社にも「かっこよくしてください」としか伝えられない。
でも、ブースの見え方は感覚の問題ではありません。「どの距離で、何が読めるか」という、設計できる問題です。この記事では、小売業で長く使われてきた考え方を使って、その基準をお渡しします。
センスの問題にした瞬間、改善できなくなる
なぜ「センス」で片づけてしまうのか。理由ははっきりしています。良し悪しを判断する言葉を持っていないからです。
基準がなければ、人は感覚で判断するしかありません。色がきれいか。写真が大きいか。全体としてまとまっているか。判断がそこで止まります。
問題は、この状態だと二つのことが起こらなくなることです。
一つは、自社で直せなくなること。「なんとなく弱い」は、修正指示になりません。
もう一つは、外部に頼んでも同じ結果になること。判断基準がないまま発注すれば、返ってくるのは「見た目のきれいなブース」です。それは、通路を歩く人にとって「何の会社か分からない、きれいなブース」かもしれません。
装飾を整えた実感は残ります。けれど、通路で素通りされた人数は誰も数えません。取りこぼしは、目に見えない形で起きます。
本当の問題は、デザインの美しさではありません。ブースの中で、距離ごとの役割が決まっていないことです。
来場者は、一つの距離から見ていない
ここが出発点です。来場者は、あなたのブースを一枚の絵として見ていません。
遠くから視界に入り、歩きながら近づき、通路際を通り過ぎ、興味があれば立ち止まる。距離が変わるたびに、読める情報量が変わります。
小売業には、この距離ごとの見せ方を整理した「VMD」という考え方があります。SHOWCASEでは、これを展示会ブースに置き換えて使います。
VP|10m前後 役割は「おや?|認知」
遠くから伝わるのは、一つだけです。大きな文字か、大きな一枚のビジュアルか、そのどちらか。
ここに載せるのは会社名ではありません。「誰の、どんな困りごとに関係があるか」です。来場者は自分に関係のない看板を読みません。
PP|通路際 役割は「へぇ。|興味」
足を止めるかどうかが決まる位置です。ここで必要なのは、主役をひとつに絞った展示です。
「何を扱っている会社か」が数秒で分かること。そして「もう少し見てみよう」と思える具体物があること。商品でも、動いているデモでも構いません。
IP|接客位置 役割は「そうなんだ。|理解」
ここで初めて、詳しい情報が意味を持ちます。ただし、すべてを書かないでください。
パネルに答えを全部書くと、来場者は読んで帰ります。理解の入口までを見せ、続きが気になる状態をつくる。そこから会話が始まり、接触が生まれます。
よくあるズレは、「3つの距離に同じ情報を置いている」
小さなブースで最も多いのが、壁面に情報をぎっしり詰め込んだ状態です。
このとき何が起きるか。遠くからは文字が小さくて読めない。通路際では情報が多すぎて主役が分からない。接客位置では、すべて書いてあるので質問が生まれない。
3つの距離のどこにも役割がないブースになります。
そして、VPに載せる一言は、デザインを考える前に決まっています。目的 → ターゲット → 課題 → 訴求。この順番で絞り込んだ結果が、遠くから見える一言です。
デザインの前に、この順番があるかどうか。それが「センス」に見えていたものの正体です。
今日やること|写真を3段階で見る
前回のブース写真を1枚だけ用意してください(今回が初出展ならデザイン案で構いません)。
パソコンやスマホで開き、次の3回、見え方を確認します。
縮小して、3秒だけ見る(=10m相当)
通常サイズで見る(=通路際)
拡大して見る(=接客位置)
それぞれで「読めた言葉」を一行ずつ、メモに書き出してください。
3行書けたら完了です。
3回とも同じ言葉しか出てこないなら、情報が一段階に偏っています。1回目に何も書けないなら、認知が成立していません。
まとめ
ブースの良し悪しは、センスではなく、「どの距離で、何が読めるか」で決まります。
自社の場合はどうなのか、気になった方へ
SHOWCASEでは、現在のブースを「認知 → 興味 → 理解 → 接触 → 商談」の流れから確認し、どこで来場者を取りこぼしているのかを無料で診断しています。
デザインの評価ではなく、商談までの道筋の点検です。