集客・キャッチコピー・訴求設計
展示会ブースでいちばん重要なもの:効果的なキャッチコピーのつくり方
イシモトキンヤ
はじめに
今回のテーマは、展示会ブースをつくる上で「いちばん重要なものは何か」について深く考えてみたいと思います。多くの展示会のプロが「キャッチコピー」をいちばん重要な要素として挙げています。しかし、本当にそうでしょうか?
ブースデザイン、展示方法、商品力など、重要な要素は他にもたくさんあります。それなのに、なぜ「キャッチコピー」というただの文字列がいちばん重要と言われているのでしょうか。その理由と、効果的なキャッチコピーのつくり方について詳しく解説していきます。
1. キャッチコピーの真の役割:オムライスの例から学ぶ
1-1. 美味しいオムライスに必要ないちばん重要なもの
いきなり話は変わりますが、美味しいオムライスをつくるのにいちばん重要なものは何か知っていますか?
良質な卵でしょうか?それとも中身のチキンライスの絶妙な味付け?あるいは最後にかけるデミグラスソースの深いコク?卵を半熟でふわふわに仕上げる技術?
実は、その答えは「スプーン」です。
なぜなら、スプーンがないといくら美味しいオムライスをつくっても、そもそも食べることができないからです。
1-2. なぜこの例がしっくりこないのか
「美味しいオムライスにいちばん重要なのはスプーン」と言われても、なんとなくしっくりこないですよね。それもそのはず、スプーンは当たり前すぎて、わざわざ語るほどのことではないからです。
しかし、「展示会のブースでいちばん重要なものはキャッチコピーです」というのも、実は同じことなのです。
両者の共通点は以下の通りです:
これがないとそもそも他のことをいくら頑張っても目的を達成できない
入口的な役割を担っている
わざわざ語ることでもないくらい当たり前のもの
1-3. 展示会の現実:当たり前ができていない
展示会ブースにおける「キャッチコピー」は、わざわざ語ることもないくらい当たり前の存在です。ところが、実際に展示会を見て回ると、特に小さなブースではキャッチコピーを掲げていなかったり、掲げていても何が言いたいのかまったくわからないものが多々あります。
これは、スプーンなしでオムライスを出すレストランがあちこちにあるのと同じような状況です。当たり前のことができていないために、せっかくの努力が水の泡になってしまっているのです。
2. キャッチコピーが難しく感じる理由
2-1. なぜキャッチコピーをつくれないのか
展示会にブースを出展するなら、キャッチコピーは当たり前に掲げるべきです。しかし、それができない理由は明確です。それは「難しい」からです。
自社の魅力を一言で伝えるというのは、確かに並大抵のことではありません。だからそこで諦めてしまい、「キャッチコピーくらいなくても何とかなるよ」と自分に言い聞かせてしまう気持ちも、わからなくもありません。
2-2. 思考停止と迷走の原因
キャッチコピーを難しくさせている最大の原因は、「いきなりキャッチコピーを考えてしまう」ことです。最初から完璧な言葉を生み出そうとすると、思考停止するか迷走してしまいます。
建物をつくるときに、いきなり屋根から始める人はいません。まずは基礎工事から始めて、骨組みをつくり、徐々に形にしていきます。キャッチコピーも同じです。まずは土台を固めて、それから徐々に焦点を絞っていくことが重要なのです。
3. 効果的なキャッチコピーをつくる4つのステップ
展示会でのキャッチコピーには、つくる順序があります。この手順に沿って進めることで、誰でも効果的なキャッチコピーをつくることができます。
ステップ1:自社がやりたいことを明確化する
「この商品で世の中をどう変えたいのか?」
まずは展示したい商品やサービスで、世の中をどう変えたいかを考えることからスタートします。これはそもそも、商品開発や仕入れの段階で、自分たちが「良い」と思ったからその商品を取り扱っているはずです。その想いを言葉にすることがステップ1です。
具体的な作業方法
ひとつに絞り込むことができなければ、たくさんリストアップしても構いません
とにかく書き出して言葉にすることが大切
完璧な表現でなくても、思いついたことを全て書き出す
「なぜこの商品を選んだのか」「どんな問題を解決したいのか」を中心に考える
ステップ2:顧客視点での価値に変換する
「相手企業にしてあげられることは何だろう?」
ステップ1と同じことを言っているように感じるかもしれませんが、ステップ2では顧客目線の言葉に置き換える作業をします。自社の想いを、お客様にとってのメリットや価値として表現し直すのです。
実践的なアプローチ
普段の営業活動で、このフレーズを顧客に言えば「あー、なるほどね」と言ってもらえるものを探す
自社の優秀な営業担当者に、「どんな説明をするとお客様に響くか」を聞いてみる
既存のお客様から言われた感謝の言葉を思い出してみる
「○○ができるようになります」「○○の問題が解決します」という形で整理する
変換の例
自社視点:「最新のAI技術を活用したシステム」
顧客視点:「人手不足を解消する自動化システム」
ステップ3:10文字以内で核心をまとめる
キャッチコピーづくりの最重要ステップ
このステップがキャッチコピーをつくる上でのキモの部分になります。今まで考えてきたことの90%を捨てます。「え?」と不安になるくらい、思い切ってすべて捨ててください。
なぜ10文字以内なのか 展示会ブースに掲げるキャッチコピーの失敗例で最も多いのが、「詰め込みすぎて何が言いたいのかよくわからない」ことです。そして文字数が多すぎて読む気にならない。つまり、誰からも見てもらえないということになってしまいます。
展示会の特殊な環境を理解する 展示会ブースで集客するということは、以下のような厳しい条件の中で注意を引く必要があります:
事前の情報がまったくない状態の人たち
情報が氾濫した騒がしい場所
同じようなブースが立ち並ぶ競合環境
ブースを通り過ぎる一瞬での判断
10文字以内でつくるコツ
「ウチは○○屋です」ということが瞬時に伝わることが最優先
その分野に関係があるか、今関心を持っていることかを判別してもらう
わかりやすさが最も大切
専門用語は極力避ける
良い例と悪い例
良い例:「経費削減」「人手不足解消」「売上アップ」
悪い例:「革新的なDXソリューションによる業務効率化システム」
ステップ4:必要最小限の装飾を加える
土台ができてからの仕上げ
ステップ3で出てきた言葉は、おそらくシンプルすぎると感じるでしょう。わかりやすければそれでも十分ですが、物足りないと感じるかもしれません。
もし物足りなさを感じたら、自由に装飾してください。ただし、いきなりキャッチコピーをつくり始めていた時と違い、今度はステップ3で出てきた言葉という確固たる土台があるので、つくりやすいはずです。
装飾の際の注意点
文字数を一文字増やすごとに伝わり方は減少する
言葉を装飾しすぎて何が言いたいのかわからなくならないよう注意
必要最低限の文字数を常に意識する
核となるメッセージを薄めてはいけない
効果的な装飾のテクニック
数字を入れる:「3分で」「50%削減」
感情に訴える:「安心」「簡単」「確実」
疑問形にする:「まだ手作業?」
対比を使う:「従来の半分の時間で」
4. 小さなブースならではの戦略
4-1. 大手企業との差別化
小さなブースには小さなブースのやり方があります。派手なキャッチコピーを掲げて集客しようとするのは、大きなブースに任せておきましょう。
中小企業の小さなブースでは、来てほしいターゲットとなる人に確実に届くような言葉を選ぶことが重要です。広く浅くではなく、狭く深くアプローチするのです。
4-2. ターゲットを絞った訴求
具体的なアプローチ方法
業界を限定した表現:「製造業向け」「小売業専用」
企業規模を明確化:「中小企業向け」「従業員50名以下」
課題を具体化:「残業時間削減」「在庫管理の悩み解決」
4-3. 来場者との距離感を活かす
小さなブースの最大の強みは、来場者との距離が近いことです。キャッチコピーで興味を引いた後の個別対応で、大手企業にはできないきめ細かなコミュニケーションを心がけましょう。
まとめ:キャッチコピーは当たり前の基本要素
展示会において、キャッチコピーは言うまでもなく重要な要素です。キャッチコピーなしで出展するのは、スプーンがないのにオムライスをつくることと同じです。
しかし、キャッチコピーは難しく考える必要はありません。4つのステップに沿って進めれば、普通の言葉でも十分に伝わる効果的なキャッチコピーをつくることができます。
成功のポイント
自社の想いを明確にする
顧客視点で価値を整理する
10文字以内で核心をまとめる
必要最小限の装飾を加える
小さなブースだからこそ、ターゲットを明確にした的確なメッセージが重要になります。大手企業の派手な演出に対抗するのではなく、本当に来てほしいお客様に確実に届く言葉を選ぶことが、小さなブースで勝つための戦略なのです。
キャッチコピーは展示会成功の入口です。しっかりとした土台をつくって、効果的な集客を実現しましょう。
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